電験三種講座,講義紹介:理論2(静磁界/磁気回路)
予約受付を開始した講義について,簡単な紹介を書いてみたいと思います。
あくまでも「簡単な紹介」ですので,講義で扱う全ての項目に触れているわけではありません。
※「簡単な紹介」といいつつも,これまで結構な分量を書いていました。今回は本当に「簡単な紹介」にしたいと思います。
理論科目の2回目は「静磁界/磁気回路」です。
静磁界
「時間が経過しても変化しない磁気的な場」を,ここでは便宜上「静磁界」と呼んでいます。
「磁気的な現象」の登場人物として,我々がまっさきに思い浮かべるのは「磁石」でしょう。
ということで,初学者向けの本における磁気現象の説明は,たいてい,「2つの磁極間に働く力(磁気に関するクーロンの法則)」や,
- $H\ \text{[A/m]}$ の磁界があるところに,
- $m\ \text{[Wb]}$ の磁極があれば,
- 磁極は $F=mH$ の力[N]を受ける
というところからは始まります。
しかし,磁気現象を学ぶ初めの一歩として $F=mH$ を扱うことは,磁気現象の適切な理解を阻害する大きな要因になると,個人的には考えています。
そしてこの考えは私個人だけのものというよりも,物理学全体の流れとなっているようです。
試験センターもこの考えに沿っているのか,「磁極に働く力」 を扱う問題は近年ずっと出題されていません(とても良いことだと思います)。
では,磁気現象を学ぶ最初の一歩として何をもってくればよいのでしょうか……,そのあたりから講義が始まります。
磁界 $H$ をどう捉えるかは難しい問題です。
電験三種の勉強をされた方の中で磁界 $H$ を正しく理解されている方がどれほどいるのかを考えると,不安な気持ちになります。
しかし,無理もありません。電験三種の参考書には,磁界 $H$ の「本当の」定義がきちんと説明されていないのですから…。
※「本当の」定義をきちんと説明しようとすれば,磁界 $\vec{H}$ と磁束密度 $\vec{B}$ が違う方向を向くところまで視野に入れなければなりません。
著名な物理学者が書いた本を読むと,磁界 $H$ がいかに誤解されているか,磁界 $H$ がいかに「磁気現象の正しい理解」を阻害しているかについて,書かれていたりします。
当講座では,磁界 $H$ の「本当の」定義を理解する余地を残しつつ,あまり難しくなりすぎないよう,「三種レベルに抑えた磁界 $H$ 」を学びます。
また,磁気現象の本質を見失わないためにも「磁界 $H$ と磁束密度 $B$ のどちらがリアルなのか」といった話もいたします。
アンペールの周回路(周回積分)の法則やビオ・サバールの法則も学びますし,これらの法則を使って磁界 $H$ を計算する方法も学びます。
※定番の内容ではあります。
磁性体についても学びます。
鉄などが「磁化する」という現象を説明するのは,かなり難しいことなのだそうです(古典物理学の範囲内では説明できないのだとか)。
ですから,磁化という現象を説明するのに「厳密には正しくないが,まあそれっぽいオハナシ」を利用するのは致し方ないと考えます。
だからといって,初学者向けの本に書かれているような「分子磁石が向きを揃えて…」という「あまりにも子供向けのオハナシ」だけでは,「反磁性」という現象を説明できません。
ということで,講義では反磁性も説明できるような,「大人向けのオハナシ」を紹介します。
磁気回路
「磁気回路」という「考え方」は,鉄心を使った電気機器などを扱う際に利用する考え方です。
これは「物理学」というよりも,完全に「工学」として捉えればよいでしょう。
「鉄心やコイルから成る物体」を「磁気回路」として眺めることで,磁気的な状況を驚くほど簡単に捉えることができます。
簡単とは言え,意外な落とし穴もありますので注意が必要です。
アンペールの法則などを「バッチリ習得した」方ほど,この落とし穴に落ちやすいので,注意してください。
磁気現象は学ぶ道筋を間違えると,正しい理解に到達するまでにかなりの遠回りをすることになります。
※私自身は $F=mH$ から学び,磁界 $H$ を完全に誤解していました。学ぶ道筋を間違えたなと感じたので,適切なスタート地点を見極めた上で,結局ゼロから学び直しました。
電磁気学が完成の域に到達している現代においては,「磁気現象を学ぶ最初の一歩として磁極を選ぶ」必要はありません。
適切な道筋で磁気現象を学習しましょう!
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