「教える」の原点

中学2年の時,仲のよい友達がいました。

私は当時「勉強が出来た」のですが,彼は「勉強が苦手な」人でした。

※その私も,高校時代は完全に落ちこぼれていたのですが…。

ただ,勉強の出来る・出来ないとは関係なく,一緒に遊んでいました。

そんな彼が,数学の定期テストの前日,「勉強を教えて欲しい」と初めて言ってきました。

「では」ということで,まずは試験範囲の内容を説明してみました。

彼はポカンとした顔をしています。

(そうか,その前段階が分からないのか。)と思い,「前段階」を説明してみました。

しかし,やはり彼はポカンとした顔をしています。

(そうか,さらにその前段階が分からないのか。)と思い,「さらに前段階」を説明してみました。

しかし,やはり彼はポカンとした顔をしています。

――(中略)――

このように,どんどん「前段階」にさかのぼっていって,ついには小学3年程度のところにまで戻ってしまいました。

このあたりでようやく「分かった」ようだったので,(よし,ここから中学2年のレベルまで一段ずつ昇っていくぞ)と思ったのですが,時間切れとなってしまいました。

小学3年レベルから中学2年レベルまで戻る説明ができなかったので,自分自身としては心残りだったし,彼の試験結果がよくなるとも思えませんでした。


後日,試験の答案が返却されました。

彼は嬉しそうな顔で私の所にやってきて,

「点数は教えたくないけど,いままでに取ったことないような良い点だった!」

と言って去って行きました。

 

結論めいたことを書こうかとも思ったのですが,今日はやめておきます…。

いつも私の心の中にある,「教える」の原点となったエピソードです。