ベクトルと複素数は別物
電験の参考書においては,ベクトルと複素数をごちゃ混ぜに扱っている事例が散見され,読者の誤解を誘発するのではないかと心配になることがあります。
電験の学習をする際は「ベクトルと複素数は別物」ということをしっかり意識なさると良いでしょう。
ベクトル量(電界や力など)の表記は,一般的には以下の表記のうちのどちらかが使われます。
- $\vec{E},\ \vec{F}$(頭に矢印を付ける)
- $\boldsymbol{E},\ \boldsymbol{F}$(太い文字にする)
一方,複素数は(少なくとも電験界隈では)以下のように表記します。
- $\dot{V},\ \dot{I}$(頭にドットを付ける)
なお,電気回路理論において「ベクトル」と称されているもの(電圧ベクトルや電流ベクトルなど)は,いずれもベクトルではありません。純粋に複素数です。
ベクトルと複素数は,似ているところが無いわけではありませんが,本質的には全くの別物です。
一例を挙げれば,「ベクトルどうしの割り算」というものは定義されていませんが,複素数どうしは普通に割り算ができます。たとえば,以下のように。
\[\dfrac{\dot{V}}{\dot{I}}=\dot{Z}\]
これは,「$ \dot{V}$」という電圧ベクトル(本当は複素数)を「$ \dot{I}$」という電流ベクトル(本当は複素数)で割っているのです。
もしも電圧ベクトルや電流ベクトルが「本当のベクトル」であるのなら,割り算などできません(ベクトルどうしの割り算は定義されていないのですから)。
ベクトル量の表記と複素数の表記は明確に区別されているのですが,電験の参考書では,電界や力のベクトル量が以下のように表記されていることを目にします。
- $\dot{E},\ \dot{F}$(ベクトル量なのに,頭にドットを付けている)
これは多分,以下のような考えの流れに沿ったものなのでしょう。
- 電圧ベクトルや電流ベクトルは「ドットを付けた表記」にしている
- 物理学や数学ではベクトルを「ドットを付けた表記」にすることはまず無いが…
- この本では「本当のベクトル」も「ドットを付けた表記」にしてしまおう
もちろん「本書ではベクトルをドット付きで表記する」などと宣言したうえで使用するのであれば,間違いとはいえません。
しかし,ベクトルと複素数の表記がせっかく別々に用意されているのに,それをあえてごちゃ混ぜにして扱うことが良いことなのかどうか,個人的には疑問を感じます。
繰り返しますが,電気回路理論における「電圧ベクトル」や「電流ベクトル」は,ベクトルではありません。複素数です。
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