電験二種合格のための,電験三種学び直しガイド(各論7):変圧器

「電験二種合格のための,電験三種学び直しガイド」も,今回を含めて残すところあと4回となりました。

残りの4回は全て電気機器についてですので,まずは4つに共通する「学び直しの方針」を書いてみたいと思います。

4つの電気機器:学び直しの方針

皆さんはすでに三種に合格しているわけですから,少なくとも受験当時は等価回路を描けたはずですし,等価回路を使った計算もできたはずです。

しかし,動作原理と等価回路の導出過程についてはどうでしょうか?

時間的な制約もあって,あまり掘り下げて勉強できなかったのではないかと推察いたします。

ということで,電気機器の学び直しでは「動作原理と等価回路の導出過程」にフォーカスすることをお勧めいたします。

人によっては,「結局は等価回路で計算するのだから,動作原理や等価回路の導出を勉強するのは無駄ではないか?」と思われるかもしれません。

しかし,動作原理や等価回路の導出過程を理解していないと,様々なケースで「理解の限界」がすぐにやってくる印象があります。
たとえば,「変圧器において,なぜ励磁突入電流が流れるのか」という疑問は,等価回路をいくら眺めても答えが出てこないのです。

こちらの電験三種講座では,電気機器の動作原理や等価回路の導出の説明に,かなりの時間を割いています。
今年の機械科目の合格率が「約10割」だったことを考えると,そのような講義もさほどわるいものではないと感じています。

変圧器:学び直しガイド

動作原理

変圧器の動作原理を説明する方法には,かなりのバリエーションがあります。
というのも,「こう説明しておけばシンプルだし,分かりやすい。これでOKでしょう。」という説明方法が無いからです。

変圧器の動作原理自体は,因果関係の連鎖反応がどんどん続いていって,最後にフィードバックがかかったようになります。
「フィードバックがかかっている」せいもあって,どうしても説明が長たらしく,きたならしくなってしまうのです。

「きたならしくなるのを嫌う」一つの説明方法として,「フィードバックループを断ち切り,因果関係を逆向きに辿っていく」方法があります。
つまり,「ここはこうなっている。であれば,ここはこうなっているべきである。…」というように,「べき論」で因果関係を逆向きに辿っていくのです。

このように説明すれば,たしかに「スッキリ」はするのですが,「因果関係をべき論で逆向きに辿る」というのは,そこで起きている現象を実感しにくいのではないかと個人的には感じています。

私としては「長たらしく,きたなくてもいいから,とにかく因果関係の連鎖反応を(順方向で)辿りたい」と考えています。

なお,エネルギー保存の法則で説明する方法もありますが,それは「その中で何が起きているかはサッパリ分からないけれど,結論としてはこうなっているはず」という説明をしていることになります。
そのような説明では結局,「その中で何が起きているかはサッパリ分からない」ということになります。

やはり一度は「ボトムアップ」の理解をしておきたいところです。

等価回路の導出

動作原理が理解できれば,等価回路の導出はさほど難しくないと思います。

しかしせっかくなので,細かい疑問点についても考えてみてはいかがでしょうか。

  • 等価回路上の「巻線抵抗」の抵抗値は,ほんとうに「巻線の抵抗値のみ」を表しているのか
  • 本物の変圧器において「励磁回路」というものはいったいどこにあるのか(もちろんどこにも「ありません」)
  • 励磁コンダクタンスは,どこかの「電気抵抗(の逆数)」をあらわしているのか
  • 「漏れた磁束」は「リアクタンス」として作用するのに,「漏れていない磁束」はなぜリアクタンスとして作用しないのか
  • 励磁回路には,抵抗とコイルを「並列にする派」と「直列にする派」がいるが,そもそも「違う回路構成」で「同じ」回路を表現できるのか

などなど。

三巻線変圧器

一次巻線に電源,二次巻線に遅れ力率の負荷がつながっているとき,三次巻線にコンデンサを接続すると,(一次側の)力率が改善されます。

キツネにつままれたような気になるかもしれませんが,これも通常の変圧器(二巻線変圧器)の動作原理がしっかり理解出来ていれば,比較的容易に納得できるはずです。

以前受講された方から,「自分はどうしても三巻線変圧器の動作を理解したい」というリクエストがありましたので,それ以来三種の講義で説明しています。

パーセントインピーダンス

電験二種では「単位法」という計算方法を頻繁に使います。

単位法はとっつきにくい計算方法かもしれませんが,パーセントインピーダンスがしっかり理解できていれば,その発展として単位法も理解できるはずです。

まずは,「なぜ変圧器の内部インピーダンスを,オーム値ではなくパーセント値で扱いたいのか」を理解する必要があります。

そして,パーセントインピーダンスの「オモテの定義」のみならず「ウラの定義」を理解することこそが,単位法の理解に直結します。



電験三種講座の「機械1(電気機器基礎/変圧器)」の講義では,変圧器について学び直すための「答え」および「ヒント」を数多く提供しております。

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